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「朝日新聞」(6/25付)に『中国文化大革命「受難者伝」と「文革大年表」』の書評。   [ 2017/06/27 ]

道徳心を腐敗させた「人民専制」
評者: 保坂正康(ノンフィクション作家)

 文化大革命は(文革)は、現代中国の最大の傷であ
る。ある年代以上の中国人の心底には、今なおその悲
劇が沈殿していて、私自身、「あの時代は悪夢とい
うより地獄でした」との言葉を何度も聞いた。
 アメリカの大学で研究生活を続ける中国人・王友琴
が、文革時の「人民専制」は「中国人の道徳心に対し
て極めて大きな腐敗」を生んだとの視点で、受難者六
五九人の実態を調べた。その書の翻訳(主要部分を抜
粋)を第一部に、そして二人の日本人研究者が長年か
けて完成させた文革年表を第二部に据えている。
 第一部では教育関係者が紅衛兵によってすさまじい
リンチを受けての絵図が語られる。たとえば北京師範
大学付属女子中学副校長の卞仲耘は教育界の最初の犠
牲者、一九六六年八月に棍棒で際限なく殴られ、全身
傷だらけで死んだ。罪状は「党の階級路線に反対」
「毛主席に反対」などの理由、しかし地震の折にどの
教室にも飾ってある毛沢東像を持ち出さず、生徒たち
に早く教室外に出るよう命じたという程度のこと。
 紅衛兵に家族ら五人が虐殺された北京の高級技術者
黄瑞五は、たまたま自宅から空薬莢一個が発見され、
銃の私蔵を疑われ全員が斬殺された。「黄家の五人
は、みな三時間以内に殺された」「一九六六年八月の
北京では、これは特別なことではなかった」と王友琴
は書く。
 銃殺刑にされた北京大学の学生顧文選は、反革命分
子とされて死刑判決、銃殺された。その理由は明示さ
れておらず、「我が党と社会主義制度を攻撃した」と
いうだけ。こうした個々の例により、約一七二万人以
上の犠牲者の残酷な死や自死の実相が浮かびあがる。
 第二部の文革年表は六五年から八一年まで日付ごと
にまとめている。私は六六年四月の北京での「燕山夜
話」批判時に文革の流れを認識したが、すでに歴史の
軸が動いていたと確認できた。貴重な年表である。





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