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中原一博著『チベットの焼身抗議太陽をとり戻すために』刊行以来、反響続々   [ 2016/04/30 ]

宮崎正弘の国際ニュース・早読み
チベット仏教はいまの中国のチベット国内のみならず、旧吐蕃(とばん)全域と内蒙古(南モンゴル)に凄まじい影響力をもっている。具体的にいえば青海省は丸ごと、チベット仏教の土地、四川省の西半分、雲南省の北西部、甘粛省の殆どが、昔は吐蕃だった。これらの地域がチベットの古里である。中国の侵略によってながらく奪われた土地である。(ちなみにパンダは四川省。つまり中国のものではなく、チベットの動物である)昨今、二百人ちかい焼身自殺がでているのは、これらの地区なのである。
地区別の統計をみると、ラサでの焼身抗議はふたり、チベット自治区全体で八名なのに対して青海省、四川省はそれぞれが数十名単位である。これは衝撃的である。
2009年3月から焼身抗議が始まったが、15年8月1日現在までに147名が焼身抗議を行い、そのうち123名が死亡した。かれらは「特別の苦しみの解放から個別の権利をもとめる動機ではなく、政治的抗議としてチベット民族全体の解放を求める民族運動である」と筆者は力調している。凄まじくも荒々しい政治運動なのである。
たとえば17歳で焼身抗議した尼僧サンゲ・ドルマさんの『太陽を取りもどすために』という辞世の句がある。
チベット人たちよ見上げよ
黄昏の蒼い空を見上げよ
白い雪山の天上の天幕のような
私のラマがお戻りになられた
しかし日本のメディアは、少数をのぞいて、チベットへの理解がまるでなく、報道もゴミ記事扱いであり、全貌がまるっきり知られていない。
本書はダライラマ法王に惹かれてチベット亡命政府のあるインド北部のダラムサラに30年を暮らす日本人の建築家が、膨大な資料と情報を集めて編んだ画期的な労作である。おそらく日本では始めての試みである。
精神的支柱として世界を行脚されるダライラマ法王に対して、北京にある独裁政権は無慈悲な政策と、国内チベット仏教徒に過酷な弾圧を行い続け、世界の顰蹙を買っているが、「これは国内問題。内政干渉をするな」と嘯き続ける。
120万人ものチベット人虐殺を「解放」といって正当化しようとしても、その嘘は明らかであり、世界で中国の印象が最悪なのは、こうした傲岸な態度への反撥が主因である。
筆者の中原氏はいう。
(焼身抗議の連続は)「中国共産党のチベット統治政策がことごとく失敗したという証し」なのであり、「焼身抗議を行う人々が最後に叫ぶ言葉は『チベットに自由を!』、『ダライラマ法王のチベット帰還を!』というものである」
それらの情報は地道に蒐集され、ダラムサラに秘密のルートで運ばれてきた夥しいメッセージや遺書によっても明らかになり、著者はブログなどで世界に発信し続けた。本書はそうした貴重な記録である。
2015年10月05日宮崎正弘(評論家・作家)
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勝谷誠彦の××な日々/どうしても広めたい一冊がある
どうしても紹介したい本をば。いや、これはぜひとも読んでいただきたい。安くはない。定価は2200円である。昼飯4食分かな?でもね、たとえ4食抜いてでも読んで欲しい。その4食は、かの地の人々への追悼の空腹だと思って。
『チベットの焼身抗議/太陽を取り戻すために』
ほぼ1週間、私はこの本から離れることができなかった。その間、滂沱の涙をどれほど流したことか。そして知った。悲しみが呼び起こす怒りほど強いものはないと。書名でおわかりのように、これは支那の侵略と弾圧に対して自らの身体を焼くことで抗議をしたチベットの人々の記録である。僧侶もいる。一般人もいる。少年もいる。少女もいる。皆が灯油やガソリンをまずは呑み、次に衣服にかけて自ら燃えるのである。帯にはこうある。「今日もまた、愛する人びとが燃えていく」。本の内容を完全に愛しぬいた編集者だけが書ける文章だと思う。
支那の暴虐についてはあまたの本が出ている。しかし、直接的にそれを糾弾するのではなく、チベットという無残に虐げられた人々の命をかけた抗議をひとつひとつ描いたこの本は、万巻にまさる。そしてそれこそが、自らを焼いて世界に訴えたかった人々の想いなのだと私は感じる。
本書には143人の焼身抗議の詳細が、それぞれのプロフィルとともにおさめられている。ひとつひとつが貴重な人生なのである。だから、1日に数冊を読みとばす私が、この本には1週間かかった。誰の項目でも、何度も読み返さざるをえなく、それが生きてあるものの責任だと痛感したからだ。もちろん私の思い入れの基礎には、かの地を訪れたという経験がある。まだ読んで下さっていない方はぜひ本書のあとにでも拙著『ディアスポラ』にお目通しいただけると幸いだ。
しかし、はるかに及ばざると思った。私の小説家としての筆力が足りないのは承知している。私はあまたの支那によるチベット弾圧の本を読んできたが、この一冊の前にはすべてはまだまだ小さい。なぜか。チベットの「全体」を書こうとしても、なかなかそれは難しいだろう。何年にもわたって住みでもしない限り、彼らの心の奥底には入れない。『ディアスポラ』など上っ面をなでただけだ。旅人としてできることはそのくらいだという自覚はあるけれども。
本書は違う。おそらくダラムサラのチベット亡命政府が大きな情報源だと思うのだが(中原一博さんという著者は傑出した作家だ。私は『カツヤマサヒコSHOW』にぜひとも呼ぶつもりである)。どんな自殺者の人生もその人にとっては大切な「その場かぎりの生」なのである。それを「太陽」すなわちダライ・ラマ14世猊下に捧げるのだ。あの支那の傲慢無表情な自称主席の下品な大熊猫に対してそういう気持ちを持つ国民がいるだろうか。
私の場合は、最初は自死を選んだチベットの英雄たちへの尊敬が勝っていた。しかしやがて、その彼ら彼女らの最後に対して、支那がどういう仕打ちをしたこということで、怒りに本を持つ手が震えてきた。焼死した遺体を武装警官が「奪う」のである。そして「何もなかったこと」にする。しかしその場には僧侶やチベット市民が何千人も現れて奪還すべく対峙する。それは今日、いま現在も行われていることなのかも知れない。
これが戦前であれば、私は馬賊に身を投じてチベットの人々のためにモーゼル拳銃を手にしたいと思った。私がヘタレなのと今の支那共産党はそうは甘くないので夢のまた夢だ。ともあれ、ぜひ一読されて感想をお寄せいただきたい。私はそれをひろめたい。
勝谷誠彦(写真家・コラムニスト)
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各人の人生に迫る戦慄の記録

北京五輪の閉幕から半年ほどたった2009年2月。中国の四川省ンガバ・チベット族チャン族自治州の県ンガバというところで、25歳のチベット仏教の僧侶が焼身自殺をはかった。以来、それにならったような痛ましい出来事が、チベットの各地で繰り返されている。
今年8月1日までに147人の男女がみずからに火をつけ、うち123人が亡くなったという。チベットの宗教や文化、生活などに対する共産党政権の高圧的な政策への抗議であるのは、疑いない。
彼ら、彼女らはどんな人物だったのか。焼身した時の状況はどうだったのか。一人ひとりについての貴重な記録が、本書だ。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世への敬愛の深さは印象的だ。冷酷なまでの中国当局の対応には、戦慄を覚える。
著者は、ダライ・ラマが亡命政府を置いたインドのダラムサラで、建築学として30年にわたって暮らす日本人。亡命者からの聞き取りなどを通して、チベットの内側で起きていることの真相に迫ろうとしている。当局が都合の悪い情報を封じ込めているだけに、得がたい仕事といえる。
共産党支配下のチベットの略史や、宗教、言語、強制移住など共産党政権のチベット政策に関する簡潔な解説が読む者の理解を助ける。(集広舍・2200円)

日本経済新聞2015年(平成27年)11月22日(日曜日)読書
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チベットの焼身抗議中原一博著
自らの身体に火をつけ「灯明」となることで、チベットの自由とダライ・ラマの帰還を求めるチベット人が後を絶たない。著者は、チベット亡命政府の拠点があるインド・ダラムサラに30年前からクラス建築家。チベット関連の政治的事件は、ほぼもれなくダラムサラに伝えられる。著者は、集められる限りの情報を集め、今年4月までに焼身した143人の背景と記録をまとめた。共産党統治によって文化、経済、信教の自由を奪われたチベット。「自由を奪われたチベット人たちの苦しみは、焼身の苦しみよりよほど大きい」。遺書から、悲しみと怒りが伝わってくる。

産経新聞平成27年(2015年)11月29日(日)書評
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今も続くチベットの悲劇のドキュメントチベットの苦悩に終わりは来るのか

ウイグル問題と並んで、チベット問題は現在の習近平・中国国家主席体制の全体主義、人権抑圧、少数民族抑圧を象徴する出来事として反中国の政治スタンスを取る人びとによってしきりに取り上げられている。日本でも安倍政権とこれを支持するネトウヨなどの右派グループが、「習近平体制の異常さ」を示す政治的事象だと強い非難の声を発している。しかし、ダライ・ラマの転生、活仏といったチベット仏教の教えの「異質さ」もあって、一般の反政府・民族独立運動とはやや異質なチベットでの焼身自殺などの「北京政府の横暴」への抗議について、広い理解が形成されてはいない。
本書は早大理工学部で建築を専攻し、チベット仏教建築を研究して、1985年にインドのダラムサラに移住し、この地に拠点のあるチベット亡命政府との交流で、チベットの反政府運動の詳細を知るようになった著者が、この運動の歴史と現状、解決策があるのかをまとめた著作だ。特にこれまでに北京政府に抗議して焼身自殺をして143人のチベット人のひとりひとりのプロフィールとメッセージを詳細に紹介しており、日本で出版された著作としては初めての試みだ。
チベット問題は、毛沢東と彼の率いる中国共産党が1949年に蒋介石の中国国民党との内戦に勝利して、国民党を台湾に追い落とし、中華人民共和国を誕生させたことに端を発している。毛は「中国人民解放軍は、中国全土を解放しなければならない。チベット、新疆、台湾も例外ではない」と宣言し、解放軍がチベットに軍事侵攻、1951年には「17条協定」が締結され、1959年にはダライ・ラマ法王がインドに亡命した。この間の軍事衝突で10万人のチベット人が殺されたという。米CIAの支援を受けたゲリラ組織「チュシ・ガンドゥク」がネパールのムスタンを拠点に中国軍への抵抗を続けたりしたが、歯が立たず、1966年からの「文化大革命」で寺院が決定的に破壊され、チベット語も禁止された。
社会主義イデオロギーより経済を重視したいという鄧小平時代には、大量の中国人植民者がチベットに流入して、この地域の経済の主導権を握った。80年代後半には、「民主化」を掲げた胡耀邦、趙紫陽体制によってチベット語の教育が復活するなど、「揺れ戻し」が起きたが、いわゆる天安門事件で趙紫陽が失脚し、江沢民体制に移行すると、再び中華民族主義一色になり、ダライ・ラマのチベット帰還を求めるような運動は徹底弾圧され、活動家は長期投獄されるようになった。焼身自殺によって北京政府に抗議する動きが活発になったのはこの頃からで、チベット自治区に比べ、北京政府の弾圧が緩かったカム、アムド両地区の僧侶が反政府運動を牽引した。遊牧民の定住化と鉱山開発も相次ぎ、遊牧民のチベット人が焼身自殺して、こういう北京政府の施策に抗議するようになった。2008年の北京オリンピック開催期間中には、数千人規模の抗議デモがチベット各地で起きたが、徹底弾圧された。
強大な北京政府の打倒を呼びかける焼身自殺僧侶のプロテスト・メッセージは次第に減っており、チベット民族のアイデンティティを守り、抗議活動に決起する人や、獄中に囚われている人々を勇気づけ、士気を鼓舞するメッセージが増えているという。仏教徒のせいか、中東のイスラム過激派のような、自爆テロなどを駆使して、武装闘争や反政府テロで北京政府と対峙しようという動きは小さく、あくまで「プロテストとしての焼身抗議」なのが、チベットの戦いの特徴のようだ。欧米では、こういうチベット人の戦いを支援する運動が展開されているが、北京政府が姿勢を変える兆しはなく、現在のシリア内戦同様、犠牲者が増え続けているという「悲劇」が続いている。自殺した僧侶たちが何をアピールしていたのかは、本書に収録されている犠牲者143人のプロテスト・メッセージが雄弁に語っている。現代世界のめどが全くたっていないことが、その悲劇性をさらに高めている。

山田宏明(作家・評論家)図書新聞2015年12月12日(土曜日)







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