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『中国妖怪・鬼神図譜』飯倉義之氏が「週刊読書人」で書評   [ 2016/04/30 ]

  神仙・妖怪・民間信仰の一大パノラマ
  話題の多彩さが目を釘付けにする刺激的な書
  評者:飯倉義之

相田洋著 『中国妖怪・鬼神図譜』
 清末の絵入り雑誌『点石斎画報』で読む庶民の信仰と俗習


  まずはその話題の多彩さが目を釘付けにするだろう。城隍神(じょうこうしん)が横領官吏を懲らしめ、仙人が霊験を現わす。首吊りや幽霊や殭屍(キョンシー)が生者を襲い、スッポンの精が老人に化ける。客を惑わす娼家の呪(まじな)い、怪盗の用いる神通力、巫女や風水先生の奇談やインチキなどの民間宗教。
 扶けい・冥婚・盂蘭盆会などの俗信・風習の数々が、貴重な清朝末期の図版でこれでもかと示される。まさに神仙・妖怪・民間信仰の一大パノラマである。
  本書は、上海で刊行されていた絵入旬刊誌『点石斎画報』(以下 『画報』)の記事を用いて、清朝末期の庶民の信仰生活を読み解く刺激的な書である。 『画報』は「画報」のなにふさかわしく、大きな挿絵と平易な文章とでニュースを伝えた印刷メディアであった。
  中国で近代的な新聞のスタイルを確立した『申報(申江新報)』を抱える申報館が発行していたが、内容はまったくお固くない。庶民生活や市井の異事奇聞から世界情勢や外国の文化などなど、ありとあらゆる新奇で珍奇な話題を興味本位で取り上げた。その姿勢が功を奏したか、一八八四年の創刊から約十五年間、五二八号まで刊行された。
  『画報』は清朝末期の中国の空気を今に伝えるタイムカプセルであり、なのかつ民俗学や社会史、文化史の大部で貴重な資料なのである。
  『画報』の内容はこれまでにも、中国文学者の武田雅哉氏らによって紹介されてきた(中野美代子・武田雅哉編訳『世紀末中国のかわら版』 中公文庫一九九九)原著一九八九など)。決して注目されてこなかったわけではない。ただ、これまでは主に歴史的事件の報じられ方や、当時の珍しい出来事や風聞巷説といった社会現象、また当時の中国に紹介された科学技術や外国(特に日本)の描かれ方等の分析に主眼が置かれ、その背景にある庶民の日常生活や信仰生活には、あまり関心が向けられなかったきらいがある。
  特に信仰の方面はその傾向が強かった。本書の「まえがき」より著者の言を引けば、「『画報』は、迷信・呪術・怪異など、中国の「呪術の園」(マックス・ウエーバーの言葉)に関しては、まさに集大成のような書であるが、この方面はほとんど手つかずの状態」だった。その空隙をようやく埋めてくれたのが、本書なのだ。当時の巷を逍遥するかのように、『画報』の記事を辿っていると、中国の文化と日本の文化の類似と差異が身体の感覚として現出するかのように思えてくる。本書は中国文化に興味関心のある読者だけでなく、中国と歴史的に関わりのあったあらゆる文化の読者にとって重要である。
  著者である相田洋氏は、中国史・東洋史の碩学である。氏と『画報』の縁は「あとがき」によると、一九六〇年代の後半、氏が大学院生の時代に東京教育大学の東洋史研究室で『画報』の抄録本に出会ったところから始まったという。その後『画報』の全巻本の刊行や、日本国内の原本調査を経て、本書の執筆に至ったという。実に五十年余の月日を経て結晶した、珠玉の一書である。
  また「あとがき」で氏は、『画報』に遺された庶民の生活・生業・遊びなどの分野についても「本書とほぼ同様の形式でできるだけ早く纏めてみたい」と述べている。刊行が待たれる続編とともに本書は、東アジアの文化を研究するものにとって必須の書であるだろう。(いいくら・よしゆき氏=国学院大学准教授・口承文芸・民俗学専攻)
  ★そうだ・ひろし氏は福岡教育大学名誉教授・東洋学史専攻。著書に「中国中世の民衆文化」「異人と市」「橋と異人」「シナに魅せられた人々」など。一九四一年生。

  週刊読書人2016年(平成28年)3月25日 






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