翻訳家・泉京鹿さんが、朝日新聞GLOBEで、『北京再造』を紹介。 [ 2015/08/05 ]
『城記』(『北京再造-古都の命運と建築家梁思成』)(集広舎)
「僕東京に住む能わざるも北京に住まば本望なり」。1921年に訪れた芥川龍之介が、室生犀星宛ての葉書にこう記したほど惚れ込んだ街。北京。筆者も同じ気持ちで20~30代のほとんどを北京で暮らした。けれど、芥川の目に映った美しい古都の容貌は、この数十年の経済発展、とりわけ北京五輪(2008年)に向けた建設ラッシュで急速に失われた。
新華社通信記者の王軍が10年がかりで取材、執筆した『城記』は、北京が辿ってきた変遷を知る上で必読の書。1950年代に古都北京を保存する都市計画を提唱した建築家・梁思成らを中心に、当時から最近までの関係者、各分野の専門家、作家ら50人余の主張、証言をはじめ都市建設をめぐる紆余曲折の過程が記されている。いにしえの北京の写真、都市計画図等資料も充実。03年刊行後、昨年までに約10万部、長年平積みのロングセラーである。邦訳は丁寧で端正な日本語で読めて嬉しい。
梁思成は東京生まれ、戊戌の政変で日本に亡命した梁啓超の息子だ。・・・・
(泉京鹿IzumiKyoka翻訳家)
朝日新聞GLOBEG-13
TheAsahiShimbunGlobeCulture(文化)2015.07.19.
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