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日本経済新聞に『中国の反外国主義とナショナリズム』の書評が掲載されました。   [ 2015/06/15 ]

日本経済新聞6月14日朝刊読書面に『中国の反外国主義とナショナリズム』(佐藤公彦著)の書評が掲載されました。
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中国の反外国主義とナショナリズム佐藤公彦著
《評》防衛大学校長国分良成

近代以降の一貫した行動様式

「近現代日本の最大の躓きの石は『中国』であった」。本書
はこの刺激的な一文で始まる。ここに著者の問題意識と結論が
凝縮されている。著者は、日中関係が今日ここまでこじれてい
る理由が中国人の一貫した行動様式にあり、それは他民族や他
国家を蔑視排斥する「反外国主義」の感情にあるという。
近代以降における中国のナショナリズムも共産主義も、反外
国主義の感情を母体に生まれたという。著者はこうした観点に
立って、アヘン戦争から朝鮮戦争までの中国近現代史に通底す
る反外国主義の意識と行動を、キリスト教排斥(教案)の歴史
を中心に跡付けている。
清朝に対する西洋の衝撃となった19世紀半ばのアヘン戦争
は、近代における反外国主義の始まりであった。林則徐は儒教
原理に基づく道徳的正義感からイギリスを非文明国扱いし、国
内では海外とつるむ官憲や商人らを侮蔑して「漢奸」と呼び、
激しく糾弾した。
こうした反外国主義の意識は、その後の太平天国の乱の中
でキリスト教に対する反感として中国社会に深く沈殿した。太
平軍はキリスト教を唱えながら海外宣教師によるカトリック布
教を妨害し、清朝政府と土着の旧勢力も太平軍を儒教原理に対
する脅威として弾圧した(南昌教案)。一八七〇年の天津教案
も、風評からフランス領事や宣教師らが暴徒によって殺害され
た事件であった。
一九〇〇年に発生した義和団事変は、没落しつつあった清朝
が極端な排外主義の義和団を利用して外国勢力を駆逐しようと
した事件であった。この敗北により反外国主義を支えた儒教原
理も挫折したが、反外国主義の意識はその後も命脈を保った。
清朝を打倒した辛亥革命は、満洲王朝という異民族支配に対
する反感がその基底にあった(反韃子主義)。その後の中華
民国期にはアメリカ人宣教師を中心に布教が進んだが、やがて
国家主義者も共産主義者も反キリスト教で一致した。また中華
人民共和国建国直後、共産党は朝鮮戦争時の「抗米援朝」運動
に合わせてキリスト教徒を弾圧し、他方で翼賛的なキリスト教
団体を組織した。
本書は、中国共産党の公式史観や日本の戦後歴史学に対する
批判精神で溢れている。主張は明快であり、面白い。ただ著者
の問題意識の起点となった昨今の「反日」が、反外国主義の歴
史とどうつながっているのかについての議論は十分に展開され
ていない。続編の刊行を期待したいところである。

(集広舎・3600円)
さとう・きみひこ49年生まれ。東京外国語大学名誉教授。
専門は中国近代史。著書に『清末キリスト教と国際関係』など。





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