『東チベットの先史社会』が、西日本新聞2013年5月9日文化欄で紹介されました。 [ 2013/05/09 ]
『東チベットの先史社会 四川省チベット自治州における日中共同発掘調査の記録』
東アジアの視点で日本を理解
近況往来
九州大学教授 宮本一夫さん
東アジア考古学の専門家である。中国・四川省のチベット族自治州で2006年に始めた日中共同研究が3月末で終了し、その成果を本にまとめた。東アジアの青銅器文化の展開を明らかにした労作。「東アジア全体をとらえることで、日本の歴史も理解できる」
先史時代、黄河や長江流域にあった「中原青銅器文化」とは別に、中国北方で牧畜中心の農耕社会に「北方青銅器文化」が広がった。北方の文化も東は朝鮮や日本へ、南は中国・雲南省やベトナム北部へ伝わったとされる。だが、南ルートは、途中にある東チベット地域の調査事例が乏しく、青銅器文化の広がりは仮説の域をこえていない。
「空白地帯」と埋めるべく、四川省西部での調査を計画した。中国政府の特別許可を得て06年、九州大学と四川省文物考古研究所の共同研究がスタート。08年から3年間は石棺墓などの発掘調査も実現した。九州大として初めての国外で発掘調査だったという。
現地を年2回以上訪れたが、標高3500㍍を超える高地での調査は苛酷だった。それでも3千年以上前の国家「殷(いん)」と同時期の青銅製の武具などを発見し、北方青銅器文化の展開を確かめた。「仮説を検証できた意義は大きい」。モンゴルでも共同研究を続けており、青銅器文化の「発信源」の調査は続く。
福岡市早良区在住の55歳 (野村大輔)
西日本新聞 2013年5月9日
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