書名 : 日中交流の軌跡
編著者 : 崔淑芬著
出版社 : 中国書店
定価 : 3,500 円
出版年 : 2017/01 月
一衣帯水の国である中国と日本の交流の歴史は長い。近現代において、中日双方には不幸な歴史があったことも事実である。それらを念頭においてなお、両国の過去の交流史にスポットを当て、未来を想うことは遙かに有意義なことであると考える。
現在に至るまで中日の交流史上で明らかになっている人的交流は、それに伴う物質・文化の側面を含めて、多岐多様に亘る。
本書では、その中で人的側面にスポットを当て、古くは徐福、鑑真や、空海、阿倍仲麻呂から、近現代の孫文や蒋介石、宮崎滔天、梅屋庄吉等を取り上げ、その足跡を辿ることを試みた。検証のために訪れた遺跡は、風化していたり、草木に覆われていたものも少なくない。しかし、これらの遺跡や交流は皆、一方では貴重な文化財であり、他方では次世代にも引き継がれるべき歴史の一齣でもある。
この探求によって、中日両国の諸領域に亘る洋々たる展望が開けるとすれば幸いである。 (筆者)
■目 次
まえがき
徐福 ─東渡上陸地の謎
鑑真 ─鹿児島の上陸記念地と伝教
楊貴妃 ─東渡の謎
空海 ─ゆかりの地 西安の青龍寺
阿倍仲麻呂 ─興慶宮と甘露寺の記念碑
謝国明 ─博多文化の展開と承天寺
朱舜水 ─儒学の伝播と日本の弟子達
呉錦堂 ─神戸の「呉錦堂池」と「移情閣」
黄遵憲 ─『日本雑事詩』・『日本国志』
孫文 ─在日の革命運動
宮崎滔天 ─日中友好発祥の聖地記念碑
梅屋庄吉 ─孫文の革命運動への援助
黄興 ─中国の西郷隆盛
蒋介石 ─日本軍事学校への留学
柏文蔚 ─長崎の「龍吟橋」と「無字之碑」
蔡鍔 ─将軍の日本留学とその死
郁達夫 ─名古屋大学の『沈淪』記念碑
魯迅 ─仙台留学と藤野先生
陳建功 ─東北大学が生んだ数学開拓者
蘇歩青 ─中国の数学教育者と日本留学
『民報』 ─中国同盟会結成と機関紙
郭沫若 ─大文豪と九州の縁
「中国留学生記念碑」 ─辛亥革命期の留学生達
陳天華 ─『警世鐘』・『猛回頭』
秋瑾 ─女英雄と下田歌子の実践女学校
周恩来 ─京都の「雨中嵐山」詩碑
聶耳 ─中国国歌の作曲者と藤沢の記念碑
華僑 ─函館他の在日華人社会
あとがき
***** 「出版ニュース」2017.4下旬号 Book Guide *****
本書は、日中交流史における代表的な人物を取り上げ、遺跡
探訪や史料調査を通じその足跡を辿るものである。始皇帝から
不老不死の薬探しを命じられて来日、そのまま日本に住み続け
たとされる徐福に始まり、5回におよぶ失敗の後、6回目の渡
航で日本に到着することができた鑑真、玄宗皇帝が愛した楊貴
妃は安禄山の乱により処刑されたと思われているが、実は日本
に渡って天寿を全うし、山口県油谷町の二尊院には墓所がある
ことが記されている。他に空海、孫文、宮崎滔天、蒋介石、周
恩来、郭沫若等が紹介され、中国と日本の間にさまざまな交流
やドラマがあったことを知ることができる。
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