書名 : 一塊のパン―ある学徒兵の回想(下)
編著者 : 上尾龍介
出版社 : 中国書店
定価 : 2,300 円
出版年 : 2015/07 月
第2回シベリア抑留記録・文化賞を受賞しました。
http://sdcpis.webnode.jp/%E3%82%B7%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%8A%91%E7%95%99%E8%A8%98%E9%8C%B2%E3%83%BB%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B3%9E/
何としても残しておかなければ──
命の尊さを伝えるシベリア抑留記
極寒と飢餓と重労働による死と隣り合わせの日々、兵隊たちはどのように生き抜こうとしたか。そして、北部朝鮮を転々しての帰還──。
極限状況下における人間性を深く凝視し、明晰な思索を重ねて綴った記録。
今日の平常な日本に生きている僕の眼から見れば、あの頃の戦友たちの死というものは、まことに無惨な死であったとしか言いようがない。
戦争という、或る意味でまっとうな状況の中での死であれば、共に戦った戦友たちに惜しまれるのが一般的であるし、もしそれが或る特定の戦況の中で特別な任務を背負っての死であったとすれば、それが如何に辛い状況を背後に残しての、別れ難い死であったとしても、或いはまた、その死自身に如何に耐え難い悲惨な最期が待っていたとしても、そこにはなお大きな救いがある。（略）
だが、シベリアの収容所での尿便にまみれた無名の死には、一片の救いすらない。彼は、言い尽くせぬ思いをやつれ果てた体に秘めて、誰一人として惜しむ者もない孤独な死を、一人で死んでいかねばならないのだ。──第三章より
【著者略歴】
上尾龍介（かみお りゅうすけ）
１９２６年,熊本県生まれ。４４年,県立宮崎中学校卒業,東亜同文会北京興亜学院入学。４５年,学徒召集,北支派遣軍配属。北部朝鮮で敗戦,シベリア抑留。４７年,復員,４８年,愛知大学予科に入学。５０年,九州大学（旧制）文学部に入学。中国文学専攻。５３年,福岡大学附属大濠高等学校教諭となる。５８年,純真女子短期大学講師,６９年,九州大学教官となる。９０年,同大学退官,名誉教授に。同年,福岡女学院大学教員となる。９７年,同大学退職。九州地区留学生問題フォーラム理事なども務める。福岡市在住。
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