書名 : 杜甫の詩と生活―現代訓読文で読む―
編著者 : 古川末喜
出版社 : 知泉書館
定価 : 2,800 円
出版年 : 2014/12 月
杜甫(712-770)は唐の玄宗皇帝が即位した年に生まれ、理想に近い政治が実現し詩歌の最盛期であった時代に、幸福な幼青年期を過ごした。杜甫の59年に渡る生涯のうち官吏の生活は3年余、初の仕官は44歳であった。
多くの年月を友人、知人を頼って生を繋ぎながら、戦乱を避け生計の道を求めて流浪し、ある時は薬草を売り、ある時は果物や稲作など農業経営に携わり、<詩聖杜甫>からは想像もできない実人生を生きた。
従来、そのような日々の喜怒哀楽や、仕官の願いが絶たれた逆境や貧困と闘う杜甫の生活詩が、注目されることは少なかった。分け隔てない人柄から生み出される題材には、旧来の漢詩には無かったテーマや言葉、修辞などが多用され、新しい漢詩への扉が開かれた。
本書は杜甫の生活の中に見られる自然への深い共感、家族や使用人との交流など、自然や人間、社会にたいする慈しみや憤慨といった人間杜甫の素朴で真率な表現を、共感をもって読み解いた著者会心の作品である。
伝統的な文語体の訓読法に対し口語による訓読法という独自の工夫を凝らし、可能なかぎり読みやすくして若い読者が漢詩に親しめるよう試みた。杜甫の詩や句法の特徴、伝記的な背景などを織り込んだ丁寧な解釈は、読者を奥深い漢詩の魅力に誘ってくれるだろう。
佐賀大学文化教育学部研究叢書 Ⅸ
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