書名 : 臨界点の中国―コラムで読む胡錦濤時代
編著者 : 藤野彰著
出版社 : 集広舎
定価 : 2,400 円
出版年 : 2007/06 月
列強による植民地支配、抗日戦争、内戦、共和国建国、中ソ論争、文化大革命、改革・開放と、激動の二〇世紀を走り続けた中国の二十一世紀は?
中国の歴史は、専制権力の堕落・腐敗や戦乱、農民暴動などによって幾度となく「臨界点」を迎え、そのつど政治体制はもとより、文化や生活までもが大きな変革の荒波に洗われてきました。一党独裁と市場経済というアンバランスな車の両輪を激しくきしませている中国の次の「臨界点」は、否が応でも増している、その存在感を考え併せたとき、日本の問題、世界の問題に直結するのではないでしょうか。
322 の年表項目と176 のキーワードを付して、手垢のついた「日中友好論」にも、視野の狭い「中国脅威論」にも与しない視点から、〈現代中国――胡錦濤時代〉を問う書です。
本書の構成
「臨界点の中国」への視点-序にかえて
I 改革と軋轢-胡錦濤時代の政治潮流
II 苦悶と模索-胎動する過渡期社会
III 負債と暗闇-鈍色の現代史
IV 自尊と混沌-台湾・民族・宗教
V 不信と誤解-呻吟する日中関係
二十一世紀中国年表(2001~2007年5月)/参考文献/キーワード索引
あとがき-中国特派員のモノローグ
著者紹介
1955年、東京都生。78年、早稲田大学政治経済学部卒業。同年、読売新聞社入社。86~87年、中国政府奨学金留学生として山東大学に留学。上海、北京特派員、シンガポール支局長などを経て中国総局長を2度務める。2006年12月から東京本社編集委員。
書評・紹介
ようやく陽の目を見たバランスの良い「現代中国論」
評者 :中国情報局ニュース 2007年7月17日
高井潔司北海道大学教授・サーチナ総合研究所客員研究員)
ようやく陽の目を見たバランスの良い「現代中国論」
朝日新聞 (夕刊) 2,008年4月3日 ほん
友好への期待が高まるかと思えば、脅威論が叫ばれる。生活に直結したギョーザ問題をめぐり、日中で正反対の分析結果が出るのはなぜなのか。悠久の歴史がはぐくんだ文化、文革の傷跡、徹底した情報管理、ふくれあがる軍事費・・・・・・・。とにかく、この巨大な国は様々な顔を持っている。
中国を語るとき、なにか得たいの知れないもどかしさを感じる人は少なくあるまい。不安を抱いたまま、21世紀の日本は中国と共存せざるを得ない。それには「バランス感覚をもって直視する『知中』の精神」が欠かせない、と本書は説く。
筆者は読売新聞で中国報道に携わってきたジャーナリスト。現実の中国を、政治、社会、民族など様々な側面から解剖する。といっても、そこは新聞記者、難解な解説や評論ではなく、キーワードや豊富な資料、インタビュ-を挟んだコラムという形でまとめてあるから、実に読みやすい。
一党独裁の堅持と加速する市場経済のなかで、表面化する矛盾にあえぐ中国が「臨界点」を迎えるならば、その影響は地球規模となるに違いない。そのとき、日本はどう対応すべきなのか。本書を読むと、「知中」の必要性を痛感する一方で、一人一人が答えを探していくしかない道のりの遠さも実感する。
第一章 改革と軋轢――胡錦濤時代の政治風景
政治改革の輪郭見えず他12篇のコラム
資料 中国専門誌、異例の北朝鮮批判
インタビュー「漸進改革で民主化を」応克復・江蘇省社会科学院哲学研究所研究員
インタビュー「言論統制は憲法違反」焦国標・北京大学助教授
資料Ⅰ 江沢民総書記の内定、「天安門」一五日前
資料Ⅱ 鄧小平「民主化に譲歩すれば、中国なくなる」
資料Ⅰ 田紀雲、失脚した胡耀邦を絶賛
資料Ⅱ 胡耀邦、民主化デモめぐり「一部の騒ぎは正しい」
資料Ⅲ 胡耀邦、「鄧小平は保守派に迎合」と更迭嘆く
インタビューⅠ『氷点週刊』停刊問題、当事者二人に聞く
インタビューⅡ「反独裁の戦線を」胡績偉・元『人民日報』社長
第二章 苦悶と模索――過渡期の流動社会
陳情者の列に見る中国社会の病根他9篇のコラム
ルポⅠ 南街村の実験――毛沢東思想貫く〝理想郷〟
ルポⅡ 儒家社会主義――『論語』を説く経営者
インタビュー「人権・民主・法治を重んじよ」茅于軾・元中国社会科学院米国研究所研究員
第三章 負債と暗闇――秘められた現代史
1 毛沢東・鄧小平はあの時、何を思ったか 他6篇のコラム
ルポ鄧小平生誕一〇〇周年――党の威信回復、先人頼み
資料Ⅰ素顔の鄧小平、娘三人が証言
資料Ⅱ鄧小平、内部講話で「早期引退」表明
ルポ革命聖地へ「赤い観光」
ルポ 文革評価、「毛沢東の断罪」及び腰
資料「四人組」逮捕の舞台裏、華国鋒の証言
ルポ文革博物館――「負の記憶」後世に
第四章 自尊と混沌――台湾・民族・宗教
中台の行方、カギ握る台湾の民意ほか9篇
解説「台湾海峡の平和」疑心深める中国
ルポモンゴルの「対中傾斜」加速
第五章 不信と誤解――呻吟する日中関係
「シャレ」と「侮蔑」の間の歴史観という壁
中国国民は「義勇軍行進曲」をなぜ歌う? ほか11篇
解説 中国の報道統制、反日感情を増幅
資料 江沢民「歴史問題、永遠に言い続けよ」
資料 何方・元中国社会科学院日本研究所長「歴史を日中関係の基礎にするな」
附録
環境汚染、土地紛争……中国を揺るがす農民暴動の連鎖
中国世論の深層と取材の視点――デモに隠れた対日感情に迫る
二一世紀中国年表(二〇〇一~二〇〇六年)
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