書名 : 中国報道と言論の自由-新華社高級記者・戴煌に聞く
編著者 : 横澤泰夫編著
出版社 : 中国書店
定価 : 1,200 円
出版年 : 2003/03 月
A5判ソフトカバー131頁
中国の民主化と自由を求めて、闘う老ジャーナリストが 率直かつ
大胆に語る中国の報道と言論の現在(いま)。
中国の反骨ジャーナリストが中国の報道と言論の現在(いま)について縦横に語った。報道の自由を一貫して求め続けてきた戴煌氏の発言は率直かつ大胆であり、中国国内では発表しえない内容を含んでいる。毛沢東に対する批判、共産党独裁の否定、民営新聞 発行の主張などきわめて鮮烈なものがある。中国も歴史を鑑(かがみ)とすべきだ との指摘には説得力がある。
悲劇の原因/中国報道界の改革開放の現状/報道と言論の自由をめぐって/
中国独自の報道・言論の自由はあるか/中国の新聞は党の「代弁者」か?/
新聞法の制定について/「三つの代表」について/新聞の民営化について/
天安門事件について/ 附録:新聞法(第三稿)の主な内容/中国報道関
連年表
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反骨のジャーナリスト ・戴煌氏の回想録
中国報道界は今 ほど遠い言論の自由
共産党政権下の中国で迫害に屈せず報道の自由を求めて戦い続けてきた国営新華社通信の元記者、戴煌氏の回想録『神格化と特権に抗して』と、中国における報道の現状について同氏に聞いたインタビュー録『中国 報道と言論の自由』が中国書店から同時出版された。
インタビューでは毛沢東への全面的な批判や、共産党独裁の否定、中国では認められない民営新聞発行の必要性に言及するなど、中国国内では発表できない内容も多く含まれる。1957年の反右派闘争から文化大革命に至る暗黒時代に中国報道界で何が起き、現在はどうなのか、そして今後動くのか考える上で貴重な資料となっている。
戴煌は個人の神格化と党幹部の特権化に反対する発言のもとで「右派」のレッテルを貼られ、57年から21年間にわたって流刑や労働改造、監獄生活を送った。名誉回復後、新華社に復帰した今も言論と報道の自由を求めて発言を続けている。
回想録では、飢えや過酷な労働によって、次々に仲間が死に、自身も何度も死にかけた迫害の日々が克明に綴られているだけでなく、当時の論説や資料などを引用しながら、報道の現場で何が起きたかを詳述している。
またインタビュー録では、前村長の腐敗を暴露した人間が、その報復で濡れ衣を着せられて銃殺刑になった最近の事例などをあげながら、報道の自由にはほど遠い現状を紹介。その原因は建国後の毛沢東の誤りと一党独裁体制にあるとし、人々に真に支持される社会主義国家実現のためには、民営新聞の実現も含めて報道と言論の自由を確立することが不可欠と説いている。
ただ、国外で出版される本とはいえ、こうした発言をする人間の存在を許容する程度には中国の改革が進んだのも事実。中国では01年7月の江沢民発言による、企業経営者の共産党入党に道が開かれた。今後資本家党員が増えていけば、政治体制にも影響を与えることが予想される。
「予断は許さないが、戴煌氏の主張通り民営新聞が生まれ、共産党が社会民主主義政党になって一党独裁が崩れる方向に中国が進む可能性も十分ある」
回想録の訳者で熊本学園大の横澤泰夫教授はそう見るのだが。
(毎日新聞 2003年4月11日 文化欄 )
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中国の言論・報道における生々しい真実の姿を映し出す。
言論・報道規制が厳しいとされる中国にも、反骨のジャーナリスト魂をもった記者はいる。歯に衣着せない新華社の戴煌氏は報道の自由を叫びつづける。本書は彼へのインタビュー記録だ。
戴煌氏は28年、江蘇省生まれ。軍事関係を中心に取材してきたが、57年の論文発表をきっかけに「右派」のレッテルを張られて、記者としての活躍の場を追われ、労働改造や監獄生活など21年間、苦難の日々をおくった。78年に名誉回復するが、その壮絶な人生は鉄の反骨精神を育てた。
インタビューは2002年3月に北京の自宅で行なわれた。毛沢東批判や民間新聞発行の推進、新聞は共産党の代弁者ではないなど大胆な発言が飛び出す。中国の言論・報道における生々しい真実の姿が映し出されている。聞き手の横澤氏は元NHK外信部記者で、現在、熊本学園大学教授。
(朝日新聞4月26日 2003年4月26日)
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