| ●書評 | 九大で「漫画学」を講義する 日下翠さん(54) 白紙なら自分でやるしかない 「マンガもピンからキリまであるけど、萩尾望都なんて そこらの小説よりずっと上よ」。コミックに埋もれた 研究室で怒り出した。世界に冠たるMANGA大国・ 日本。だが、国内での取り扱われ方が、よほど腹に 据えかねるらしい。 マンガは絵と文字と擬音の三つで構成され、文学の 延長上にある総合芸術・と言い切る。視覚的だから、 想像の幅は狭まるが、感情に直接訴える。絶妙なコマ 割りは映画に通じるスピード感を生む。 「まさに新たなメディアだ」。研究価値を感じたもの の、学問としての大系化はまったくの白紙。「だったら 自分でやるしかない」と、01年から大学で「漫画学」 の講義を始め。『漫画学入門』(中国書店)を刊行した。 専門は中国の大衆文学。「フィクションが卑下され続 けた」中国に比べ、日本には紫式部以来、千年のフィク ションの歴史がある。そんな土壌がマンガの文化を育み、 成熟を促したという。 大阪生まれ。物心ついたら兄たちのマンガが周りにあ った。マンガ読みたさに字を勉強した。4000冊を所蔵。 毎月、数万が新刊に消える。「マンガやってる大学教授」 なんかが新聞記事にならない社会に、と願っている。
朝日新聞 2002年6月25日 (研究室から)
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